ふだん、わたしたちは大きな世界のことを意識しては生活していない。
せいぜい自分の通う学校や職場や、手の届く範囲が関の山だ。
アーモンドは主人公ボビーの成長を通して、わたしたちに自分と他者との繋がりを、
また、狭い世界から大きな世界への視点の移動を訴えているのだと思う。
彼と関わるのは火喰い男マクナルティー、そしてキューバ危機を迎えた「時代」。
「・・・もしどうしてもだれかを召さなくてはならないとしたら、このぼくを。
ぼくは灯台のすぐそばのキーリーベイに、愛するもののすぐそばで暮らしています。
・・・どうぞぼくを召してください」
世界中が愛するものとともに過ごしたであろう一夜。一切の罪や過去を許したであろう一夜。
自分が生まれる以前のその日、何事もなかったからこそ、わたしたちがいま存在している。
「不思議なものや超自然的なものが一切出てこない、一見リアリズム風のこの作品こそ、
アーモンドの魅力が最も凝縮されているような気がする」
という金原さんの訳者あとがきに尽きる。