本書には「ヤマト編」と「異形編」が収載されているが、COM誌では「ヤマト」の次は「宇宙編」だった。
この二編あたりから、著者は本シリーズのテーマを少しずつ変えていった。
当初は“永遠の命”というのがメインテーマだったが、やがて“命とは何か”ということから、“生きることの意味”を問うものへと変わっていった。
本編はその転機になった作品という意味でも、本シリーズ中で重要な位置を占めるものである。
著者の中でどのような変化があったのかは分からない。
健康上の理由などだったのかもしれない。
とにかく、“永遠の命”を得て生き続ける、ということから、“生きている間に何ができるのか”ということになると、今度は永遠の命なんてどうでも良い、ということになる。
生命の意味と、人生の充実というテーマにシフトして、本シリーズでは火の鳥の存在意義が薄くなった。
だから、火の鳥がほとんど登場しないエピソードもある。
それは多分、「ヤマト編」の殉死のエピソードのあたりからであろうし、「宇宙編」の牧村の立ち位置なんて、まさに続く「鳳凰編」の裏返しのようなものだ。
だから、本作の火の鳥はとても人なつっこく、色っぽい。
そして、シリーズ中で最も人間的な感情を見せる。
「黎明編」と比べてコミカルさが強い分、リアルタイムで読んだときには、あまり高く評価できなかった。
しかし、あらためてシリーズを通して読み直すと、「ヤマト編」の持つ意味と、完成度の高さが分かる。
本シリーズは、どうしてこう過去編のほうが未来編より傑作なんだろうと、あらためて思う。