文学の薫り高い名編。
自論として、『火の鳥』の最重要作は「未来編」だと思っているのですが、物語という意味では、この「鳳凰編」がおそらく最高傑作、ではなかろうかと。
「異形編」も私の中では並び立ちますが。
はい。
「『鉄腕アトム』で颯爽とした世界観を描いた手塚治虫だったが、この作品(『火の鳥』)に於いて手塚は《某有名宗教団体(自粛)》の手先となった」と云う意味の事を、かの三島由紀夫は云ったそうですが、この「鳳凰編」辺りに特に強い感じの、仏教文学的色彩に反発したのかも知れません(想像)。
ただ、後に手塚治虫当人が述懐している所に拠ると、三島由紀夫と自分との間には、どこか近親憎悪的な感情があり、実は似た者同士だったのかも知れない、との事です。
それはさておき。
『火の鳥』中屈指の名作である事は間違いないところで。「我王」はおそらく、シリーズを通して最も人気が高いキャラのひとりではなかろうかと。
元々、白土三平『カムイ伝』を、手塚治虫流に真似する形で始まったとされる『火の鳥』ですが、無論そこは天才作家。自らの底力を、自ら設定したテーマによって引き出される格好となり、世界レベルの傑作へと昇華。と同時に、作家としても、また経済的にも苦労していた(虫プロの倒産とかがあった)この時期の手塚治虫をまさに不死鳥の如く蘇らせたのでした(受け売り)。
実のところ、大河作品である『火の鳥』には、ちょっと冗長と云うか、云ってみれば中だるみみたいに感じられる箇所も、作品によってはあったりするのですが、この「鳳凰編」に関しては、手塚治虫の物語作家性が存分に発揮された傑作ですので無問題。一瞬たりとも緊張感が途切れる事なく、読者を物語世界にどっぷりと浸からせてくれます。
是非。