全体を通しての感想だが、
まず、著者のイメージする灘校像があり、それに近づけるべくデータを取ったのではないかという印象がぬぐえない。
だから、自分の思いとは違うことに関する考察は驚くほど浅い。
例えば通塾率。
本当に塾・予備校を利用している生徒がどれだけいるか。
鉄録以外の塾・予備校については、籍を置いて模試を受けるだけ、あるいは自習室を利用するだけという使い方をしている生徒が多いというのは、灘校内では、ほぼ常識である。
ちなみに、灘校生は予備校の特待生で基本的に予備校代は無料のことが多い。
また、近年の灘を語る上で避けて通れないのが、
浜学園、希学園という小学生向けの塾の存在である(灘校生の6割がこのどちらかの塾の卒塾生・希は浜から独立して出来た塾)。
関西中学受験界では、「浜+希=110名」の法則というのがあるぐらいである。
この塾の存在が、今の灘校生にどれだけ大きな影響を与えているかというところまで踏み込んでほしかった。
私自身は、浜学園が灘中合格者日本一をとったことと、
灘が東大合格者日本一の座を開成に明け渡したこと
(医学部志向の増加)は大きな相関関係があると思っている
(それまでは、灘は天才のみが集う学校であったが、
浜の徹底した復習主義とにわかには信じがたい勉強時間により、
天才ではない子どもでも努力で合格できる学校に変貌を遂げた。
つまり、努力で入ってくる子が増えた分、天才が少なくなった)。
また、著者は、灘入学者は誰もが自分が一番だと思っているらしい。
ところが、実際の灘入学者は、自分が一番なんてことは大多数の生徒はさらさら思っていない。
彼らは、受験前から塾で細かくクラス分けされ、上には上がいることを知っている。
それゆえ、この学校には価値観の多様さを認める校風があるのだ。
そんなことは、合格最低点と最高点が500点満点のテストで100点近く違うということからもわかるはず。
まぁ総じて、考察は浅いし、灘の魅力の半分も語れてはいない。