「詰め込み教育」の反省から「ゆとり教育」となったが、その後、学力の低下
が憂慮され、まだ日本の教育は「模索状態」といった感じである。
友人に勧められてこの本を手にしたが、「東大進学校」で有名な灘中に、こん
なにもユニークな発想を持つ国語教師がいることを知り、深く感動を覚えた。
私が、この本から学んだのは、教育の成果が上がるか否かは、決して授業の
「量」の多寡にあるのではない、ということ。別の角度からの発想が大事だと
いうことだ。本の中では、「銀の匙」というたった一冊の本を国語の授業の教
材として、授業中に駄菓子を試食したり、美術の時間と連携を取って凧作りや
凧揚げを実際に行ったり、本に出てきた疑問は、すっきりするまで徹底して解
明していこうとの教育の実践が紹介されている。
一例を挙げると……。
中国では「干支」の「干」が幹にあたり、「支」が枝にあたる。日本に渡って
それぞれを「兄」と「弟」に配したという。基礎をしっかりと固めて次に進むという
「道すじ」がしっかりと示される。この次に「木火土金水」を組み合わせて「き
のえ(木の兄)」「きのと(木の弟)」「ひのえ(火の兄)」「ひのと(火の弟)」
という「十干」につながっていく、ということが紹介され「甲乙丙丁……」の読み
方が理解と共に身に付く、というわけである。
一事が万事で、物事の「成り立ち」と「道筋」をきちんと踏まえながら考えて
いくので、自ら考え、理解していこうとの興味が尽きない。
こうしたやり方だと、脳がわくわくしながら、発達していくに違いない。
東大合格率よりも、「自分の頭で考える力」。この原型を若い内に訓練を受
けた灘中出身者は幸せだと思う。教育に携わる方々が、こうした教育法の存在
を知り、次代を担う大事な人材育成に活用されれば、教育の行き詰まりを打破
する有効な力になるのでは、と期待する。