著者はノンフィクション作家とのことだが、本書を読んでの印象は、ジャーナリストによるレポートの感が強い。古代史のホット・スポットをめぐって考古学者や歴史学者を訪ね、遺跡を見学したレポート。現状を俯瞰するには便利だろう。
文章のテンポがよく、ポイントもよく突いている。さすがに達者だが、記述の内容はやや軽い。新書としても薄い(内容だけでなく厚さも)。このテーマで、この構成(話題の数)なら、少なくとも1.5倍くらいのボリュームが必要なのではなかろうか、と思った。内容的には、第6章「古代東国の中心地上毛野を行く」が他書にない情報を現地の研究者から聞き出していて出色。
大山誠一氏の説に多くを負うと著者自ら語っている。大山氏の説は鋭いが、フライング気味のところも多い(具体的には大山誠一『天孫降臨の夢』アマゾンレビューを参照)。門外漢を自称する本書の著者だけに、あやうい。この点、読者は心する必要があろう。
また、以上とは別に、一般論からしても、大山氏は文献学者であり、氏の仮説を「考古学の最前線」と突き合わせる必要がある。整合する点、しない点を整理して提示する、もっと明確な問題意識と視点があれば、と惜しまれる。
なお、古事記について偽書説が付きまとってきたが、現在では序のみが偽造されたとする三浦佑之氏の説が有力とある(p103)。古事記の序文を偽造されたものとする説は学界で相手にされていないことを当の三浦氏がさまざまなところで嘆いているのを著者は御存知ないのだろうか。
【追記2011.03】本書後半でレポートしている「伊勢神宮はいつ誕生したのか」については最近、ちくま新書から出た『伊勢神宮の謎を解く』が説得力のある新説を展開しています。この問題に関心のある方に熱くおススメです。