【著者より】
かの鉄血宰相ビスマルクが語った(諸説あり)
といわれる言葉に、こんな一節があります。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
私はこの“歴史”という言葉を“他人が過ごした時間や経験”と
置き換えることができると思っています。
今から遡ること約20年前、この国には“バブル”と呼ばれた
かりそめの栄華の時代があり、その後、暗く長い時代が続きました。
現在の不況はたしかに規模やその構造、時代背景は当時と大きく異なりますが、
日本国内でモノが売れず、世の中が疲弊しつつある状況は酷似しています。
その時代に生きた経営者たちは、その時、何を見、何を考え、どう行動したのか。
この本は、こうしたコンセプトの下、取材先企業の選定から始まりましたが、
取材許可をいただく作業は難航しました。
ある企業はバブル崩壊後の「失われた十年」の間に消滅しており、
また別の企業は、取材申し込みの直前に会社更生法の適用を申請しました。
優良企業でも「取材に応じたいのはやまやまだが、明日はわが身かも」と、
厳しい経済情勢を、まざまざと見せ付けられたのです。
今回、取材に応じてくださった企業のいずれもが、決して絶対安泰なわけではありません。
ただ、自分たちの大変だった時代、経験を他に伝えることで、
「閉塞感に満ちた今の世の中に、一石投じたい」という、
いずれも勇気ある経営者たちなのです。
東京のみならず、箱根、沼津、奈良、尼崎といった地方都市で奮闘されるそれぞれの経営者の言葉に、
私自身、どれほど背中を押される思いがしたでしょう。
そして長年、いわゆる「東京23区内の価値観」で生きてきた
自分の世界の狭さを改めて感じ、恥ずかしくも思いました。
読者の欲しい答えそのままズバリが、本書にあるかはお約束できません。
しかし、年齢や性別、業種や業態も異なる10人の経営者の言葉の中に、
皆さんが探している答えのヒントや、小さな一歩を踏み出すきっかけがあるかもしれません。
仮に、結果が出るまでに3年の年月がかかるとしても、
何もしなくても同じ年月は、無常にも過ぎていきます。
だったら、何か行動したほうが断然いい。
この本は、今日も現場の最前線で戦う人たちに向けての
10人の経営者と私たちからのメッセージです。
ボールは投げました。
一人でも多くの方の心に届きますように。