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潤一郎訳 源氏物語 (巻1) (中公文庫)
 
 

潤一郎訳 源氏物語 (巻1) (中公文庫) [文庫]

紫式部 , 谷崎 潤一郎
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登録情報

  • 文庫: 505ページ
  • 出版社: 中央公論新社; 改版 (1991/7/10)
  • ISBN-10: 4122018250
  • ISBN-13: 978-4122018259
  • 発売日: 1991/7/10
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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5つ星のうち 5.0 平安時代の空気が息づいている, 2004/5/12
レビュー対象商品: 潤一郎訳 源氏物語 (巻1) (中公文庫) (文庫)
源氏物語の定番の現代語訳には、谷崎訳・与謝野訳・円地訳・瀬戸内訳等
がある。谷崎訳は源氏初心者向けでないものの、最も文学的に秀でた訳だ。
意訳も抑えられ原文に忠実で、解釈も正確といえる。

初心者向けでない理由は、わざと原文通り主語の省略を活かしたままなので、
誰の行為なのか読み取らねばならないこと(頭注や、敬語の程度、文脈、
ニュアンス等で分かる人には分かる)、意訳を抑制してあるので原文のあいまいさ
・ぼかし表現が残り、どんな内容なのかをも読み取らねばならない箇所があること、など。
これらは一見不親切に見えるが、源氏物語に充満している平安貴族社会独特の
雰囲気を失わず、文学性を実現しながら原文を忠実に守るという高い目的の為に
敢えてそうしてある。源氏物語を溺愛し続けた川端康成も谷崎訳に「完璧だ」と
賛辞を送った。
谷崎源氏にはいかにも古典を訳しましたという機械的で不自然な無機質さがなく、
普通に文学を読んでる思いだ。訳に主語をいちいち補うと解説調になってしまい、
臨場感・リズムが失われて詩的感覚の無い単調な脚本になってしまう。
「源氏物語を勉強したい」ならともかく、「源氏物語を味わいたい」人には谷崎がいい。
凄く情感的だ。ぐいぐい引き込まれて読んでしまい、疲れない。
どこから読み始めても、たとえ人物関係が分からなくなっても味わえ、慣れれば
不思議とスラスラ分かるようになってくる。
登場人物に対する冷ややかな批判的視線も無さそうで、訳者が男であるためか
姫君達それぞれの魅力的な様子や仕草の描写に実感がこもっていて、共感する。

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10 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 源氏物語の本質を押さえた現代語訳, 2011/2/11
レビュー対象商品: 潤一郎訳 源氏物語 (巻1) (中公文庫) (文庫)
谷崎潤一郎が現代語訳した源氏物語は、主語を補っていないと言われることがありますが、それは世間の誤解でして、原文と比較すれば主語をかなり補っています。行き過ぎた主語の挿入を控えながらも、谷崎は読みやすさにかなり配慮したように思います。

■原文(桐壺)
みこ六つになり給ふ年なれば、このたびは覚し知りて恋ひ泣き給ふ。年頃なれば睦びきこえ給へるを、見たてまつりおく悲しびをなん、返す返すのたまひける。今は内裏にのみさぶらひ給ふ。

■谷崎の現代語訳
御子が六つにおなりになった年ですから、今度は様子がお分かりになるので、恋い慕うてお泣きになります。祖母君も、年ごろ自分に馴れ親しんでおられたのを、みすみす後にお残し申してこの世に暇を告げる悲しさを、繰り返して仰せになったのでした。もうそれからは、若君は内裏にのみばかりいらっしゃいます。

さて、近頃は、源氏物語から敬語を省略しながら現代語訳をすることが、なにか気の利いた読者サービスであるかのような宣伝をたびたび見聞きします。しかし、源氏物語の敬語というものは、おろそかにできないものだと思います。

まず、貴族を貴族らしく物語るために敬語はとても大切です。貴族の物語から敬語を省くということは、貴族を庶民扱いすることになりかねません。また、源氏物語という絵空事にリアリティーを与えるために、できるだけ多様な敬語を縦横無尽に駆使して貴族社会のディテールをしっかり描き込んで行くことも、読者を物語世界に引き込むうえで、とても大切な表現技法なのだと思います。

実際、源氏物語の原文には、給う(なさる)・侍り(ございます)・おぼす(お思いになる)・奉る(させていただく)・聞こゆ(申し上げる、おおせになる)・聞こし召す(お聞き遊ばされる)などの敬語表現がすごく多いです。文字数をカウントすれば、全体のおそらく1割ぐらいは敬語表現に用いられていることでしょう。

このような源氏物語から敬語を省いて現代語訳するということは、いわば源氏物語絵巻をモノクロ写真で見るようなものです。モノクロ写真では、絵巻の構図こそ分かるものの、色を見たり感じたりすることはできません。敬語を省く現代語訳もこれと同じことで、物語のあらすじこそ分かるものの、平安貴族の優雅さや宮廷行事の雅やかな雰囲気が乏しくなってしまうのは、避けられないことでしょう。

また、日本語の性質として、敬語を用いたり前後の文脈から推測したりすることで、主語をある程度省くことができるという特徴があります。これをうまく利用すれば、源氏物語のように複雑な人間関係や内面心理を描こうとしている文学作品も、滑らかな語り口で物語を叙述することができます。

つまり、貴族を貴族らしく物語るためには敬語表現が欠かせないし、その敬語表現があればこそ、日本語の特徴である主語の省略が可能になり、滑らかな語り口で物語ることもできるようになるのです。たとえば、源氏物語の夕霧の帖から抜粋した次の場面では、敬語を使い分けることで、登場人物三名の動きをたった一つの文で物語っています。

■原文(夕霧)
あさましうて見返りたるに、宮はいとむくつけうなりたまひて、北の御障子の外にゐざり出でさせ給ふを、いとよう辿りて引きとどめ奉りつ。

あさましうて見返りたる・・・落葉の宮に仕える女房の行為
ゐざり出でさせ給ふ・・・落葉の宮の行為
辿りて引きとどめ奉りつ・・・夕霧大将の行為

このように、源氏物語のような古い物語では、『敬語表現と主語の省略』は互いに切り離せない表裏一体の関係にあります。

敬語なくして源氏物語なし。
敬語表現は源氏物語の根幹を支えているのです。

このことを、谷崎潤一郎は百も承知していたことでしょう。だから、谷崎はけっして敬語をおろそかにしませんでした。そして、『敬語表現と主語の省略』が表裏一体となる語り口を、千年前の古い日本語から現代日本語に置き換えて実現すべく、源氏物語の現代語訳に挑んだのです。

その結果、谷崎源氏には、原文の敬語表現をできるだけ現代日本語に置き換える心配りが随所に見受けられ、その美しくも巧みな敬語の言葉遣いは、どこまでも唖然とさせられるばかりの見事さです。(敬語を省略した現代語訳が子供の作文に見えて気の毒になってしまうほど)

そして、敬語表現を豊富に取り込んでいることが、主語の省略も容易たらしめ、水が流れるように滑らかな語り口で、源氏物語の世界を物語っています。谷崎源氏は、まさに千年前の物語を現代日本語に置き換えたものであり、他に類を見ない素晴らしい現代語訳だと思います。

心ある読者のみなさんは、ぜひいちど本書をお手にとってご覧になり、現代最高の日本語にお触れになってみてはいかがでしょうか。
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5つ星のうち 5.0 谷崎潤一郎の最高峰か, 2007/6/2
レビュー対象商品: 潤一郎訳 源氏物語 (巻1) (中公文庫) (文庫)
谷崎作品は好きで、全集三十巻以上と谷崎源氏十二巻、とりあえず一般人が手に入れられる範囲では、全て読んだ。何度も読んだ。
で、きら星の如き、傑作数多あるなかで、彼の文学の最高峰は源氏物語訳だと思った。

どう好いのか、どう美しいのか…物語の面白さは紫式部の筆に帰するとしても、
谷崎訳の現代語表現の美しさ(流麗、豊穣、気品、陰影、朧さ加減、匂やかさ、しっとりとした敬語、文字配列の視覚的美しさ等々、、、、挙げればキリがない。)は、
彼の才能と長年の芸術活動の成果、賜物ではないだろうか。
若年時からの様々な試み、鍛錬を経、彼は遂にここに日本の伝統美を表現しきったのだろう。
まさに谷崎源氏は日本文学の白眉だと思う。

源氏訳については、谷崎、与謝野、円地、瀬戸内といろいろな源氏あるが、
この作品はよく「谷崎さんの源氏で、訳としてはわからない」(川端康成)と言われるように、
源氏を勉強しようとする人には不向きで、そう言う人には瀬戸内寂聴さんのものがいいのではないだろうか。
(「自分のものはかなり原作に忠実だ」と言う様なことをご本人がどこかでおっしゃっていたから。)

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