感動ドラマと聞くと重苦しい闘病記を想像しがち。だけど、全身麻痺の主人公の狭い視界に映し出される病室にすら詩情が溢れている。
カメラワークも斬新で効果的。ジャン=ドーの視界でカメラが使われ、主人公の視ているものがスクリーンに広がり、その表現手法に感嘆してしまう。我々も彼と共に私も潜水服を着せられて、海底へ沈められて、ただ闇に鳴り響く呼吸音に不安になり、ボンベの酸素が残り少なくなることに怯えるのだ。
でも彼は、決して悲嘆に暮れたりせずに、自分の置かれている状況を少しシニカルにユーモアさえ交え描写する。
21世紀の今では、目の動きとまばたきでキー入力が可能なパソコンがあるようですが、この時代の方法は、いたってシンプル。何度も何度もアルファベットが読み上げられ、そのたびにまばたきが繰り返される。その回数20万回以上!! 執念ともいうべき根気とあふれる思い。そして、それを支える献身的な人々。
やがてカメラが、車椅子やベッドの上から解き放たれて、羽をもって自由に飛翔する時、言いようのない高揚感に包まれる。失ってから気付く家族の(周囲の人も)愛、そして身体が動かなくても「記憶」と「想像力」で、表現し創造することができることの驚きと素晴らしさ。魅力的な登場人物とそれを演じる巧みな演者。
スクリーンに映し出される全てのカットが美しく、控えめだけれどその映像を引き立たせるオリジナル楽曲も、U2、トム・ウェイツなどの歌も胸にしみた。