漱石が奥さんや友人、弟子達などに宛てた手紙を集めた本。
20才頃から晩年まで時系列に並べられているが、
『英文学者になるのはつまらない(藤代禎輔あて)』
『女が強情では困る(夏目鏡子あて)』
『牛になって人間を押せ(芥川龍之介/久米正雄あて)』
こんなタイトルを編者がつけてくれているので、興味をひく手紙をつまみ食いしている。
初期の手紙は候文なのでやや読みにくい。
イギリスへの洋行中に、奥さんにもっと筆まめになれ、言い訳するなと怒るのも人間臭くておもしろいが、
文学で戦う姿勢、天分の全てを燃焼させ、独りでもいけるところまでいって、それから倒れるのだ、
という覚悟が響く。
どこまでも漱石は男だ。
詩人の長田弘さんの作品に、漱石の手紙を素材にした『頓首漱石』があるが、
漱石のまっすぐさと感受性がぎゅっと圧縮されていて、ことばが心に残る。
こちらは、『一日の終わりの詩集(みすず書房)』に収められています。