●著者は、漱石の長女(筆子)の娘(4女)の夫に当たり、自他ともに認める漱石ファン。日本近現代史に関する歴史小説が作品の主であるが、漱石に関する著作も多いベテラン作家である。
●本書は、著者がこれまでに書いた漱石に関係するエッセイを編集部が集めて一冊にまとめたもの。ベテラン作家にありがちな編集者まかせの構成が成書としての完成度を下げているが、そのひとつひとつはさすが滋味があって漱石ファンを気持ちよく満足させるツボが見事に押さえてある。
●軽妙(ちょっと悪のり気味?)なエッセイが多いが、日露戦争と小村寿太郎に関する一章はさすが歴史小説家という感じで堂に入っている。おかげで、漱石の生きた時代の国民の心情や社会の動きなどに理解が深まり、よりいっそう漱石作品を楽しむことができるようになった。
●付録の戯曲「夢・草枕」は、その出来映えはともかく漱石ファンなら思わずニヤリとさせられる仕掛けが満載。