高畑勲監督が漫画映画の道に進ませた『やぶにらみの暴君』≒『王と鳥』の魅力を
申し分なく書き記した本です。
『やぶにらみの暴君』で大きな衝撃(序章)、
『やぶにらみの暴君』が作者グリモーとプレヴェールに否定されてから
『王と鳥』が「改作」されるまでの数奇な経緯(第一章)、
『やぶにらみの暴君』の先見性(第二章)、
両作品の映像表現における相違点(第三章)、
作者グリモーとプレヴェールの人となりと彼らの諸作品(第四章)、
そして社会に貢献するアニメーションの役割(終章)、のように展開していきます。
高畑監督は基本的に『やぶにらみの暴君』の方が
『王と鳥』よりも出来はいいとしています。
しかし、『王と鳥』は世界の仕組みを分かりやすく
観客に伝えることに関しては『やぶにらみの暴君』よりも
成功しているとしています。
その世界の仕組みを伝えていた作者たちの先見性について
書いた第二章では、多少政治的ですが、
昨今の世界情勢について高畑監督が抱いている危機感が
ストレートに伝わってきました。
第三章では二つの作品の演出について専門的に語っており、
アニメーターを目指している人、アニメに興味を持たれている方
には一読をお勧めします。
特に、高畑監督の音響や音楽に関するこだわりには驚異的でした。
終章においては、「癒し」や「励まし」ために作られる
単なる消費財としてのアニメーションに違和感を表明しています。
高畑監督は、アニメーションによって現実の世界の仕組みについて
観客(特に子どもたち)に考えさせ、彼・彼女が自立し、
かつ充実した人生を歩む人間になることを願っています。
終章もアニメ志望者・関係者に読んでもらいたい箇所でもあります。
子どもたちに本当のものを見せようとし続けたポール・グリモーの志が
高畑勲監督にまで受け継がれていることが見えてきました。