中国人60人、日本人40人の漢詩を100首集めて、しかも、全文ではなく、サワリといいますか、一番、調子のイイところを紹介した、東洋の歴史2500年で生まれたベストヒット・メドレーみたいな本。選者である詩人の高橋睦郎さんは、『敗戦の折、日本人一般の脳裏に浮かんだのは、人麻呂の和歌でも芭蕉の発句でもなく、杜甫の漢詩の一行、「国破れて山河在り」ではなかったろうか』とまえがきで書いていますが、漢詩はの日本語に対する影響というものは本当に大きいものだと思いますし、副題の『日本語を豊かに』というのが、意図を語っています。
楽しいのは、日本人の詩人はともかく、中国の詩人のチョイスには相当、心が砕れているところ。なにせ、一番最初が孔子。「逝く者は斯夫の如きか、昼夜を舎かず」(『論語』子罕)が収められているんですから。そういえば詩ですよね。この響き、調べは。次も荘子の胡蝶の夢ですし、ようやく陶淵明が来るのは11人目。もちろん、『和漢朗詠集』の伝統は生きていて杜甫と李白は一篇ずつ。まあ、一人一篇ということで白楽天もひとつにはなっていますが(『和漢朗詠集』では135篇!)。中国人のラストは毛沢東の「七律 答友人」(1961)の一節。「九巍山上、白雲飛び、帝子 風に乗って翠微に下る。班竹一枝 千滴の名涙、紅霞万朶、百重の衣」。確かに、こんなのを読むと、毛沢東といのは皇帝の気分だったんだろうな、と思います。