二畳庵主人とは中国思想研究者の加地伸行先生のことだったのか!
高校時代、予備校にはいかずにZ会(増進会)の添削で大学受験勉強していた私にとって、ほんとうに読んで面白い漢文参考書がこの二畳庵主人による『漢文法基礎』だったのだ。いまからすでに30年(?)近く昔のことである。
まさに、「二畳庵主人リターンズ」! しかも、覆面を脱いだその人は、加地伸行。儒教研究者という学者の顔だけでなく、歯に衣着せず舌鋒鋭く論じる論客でもある加地氏が書いた文章であるといわれれば、そのとおりだなあと納得する。
私が読んでいたのは本書の底本である『漢文法基礎』(新版)の前のエディションで、こんなに分厚くなかったのだが、いま講談社学術文庫版を手にして、思わず読み進めている自分を発見してしまう。なんせ面白いのだ。当時の語り口調がそのまま再現されているので、懐かしいという気持ちもあるが、それよりも講義を受けているというライブ感が素晴らしい。ちょっと引用してみようか・・・
「この私、二畳庵先生は、大学で中国のことを専攻して以来、二十年あまり漢文で明け暮れてきた。・・(中略)・・こう言っては自慢めくが、高校漢文教育の経験豊富である。だから諸君の弱点もよーく知っておるぞ。・・(後略)・・」(初版1977年の「はじめに」より)。
全篇こんな調子で面白おかしく、しかし本質をズバリ突いた内容の講義が続くわけだ。もちろん、漢文が読めたからといって、現在使われている中国語ができるわけにならないので、実用という観点からいったら得になるかどうかわからないが、この本は読んで絶対に損はないとはいっておこう。小西甚一先生執筆の大学受験参考書のロングセラー『古文研究法』とともに、イチオシの漢文参考書としてすべての読者に勧めたい好著だ。
ホンモノの学者が書いた受験参考書は、こんなにも面白くてタメになるという良き見本である。受験勉強は、ほんとうは役に立つのである。