漢字の専門家である著者が漢字の読み書きと生成について例を挙げて説明している本。「漢字を読む」「漢字を書く」「漢字を作る」の三章構成だが、一番面白かったのが第二章「漢字を書く」。学校のテストで、別の漢字と間違えられる可能性がない場合でさえ、漢字の「ハネ」や「ハライ」が間違っている、あるいは筆順が違うなどの理由で誤答とされたる例があるし、この点で厳格な先生もいるようだ。しかし、著者はいう、「その先生は教育に「きびしい」のではなく、漢字に関する正確な知識がなく、どのように書くのが正しいのか自信をもって指導できなから、単に教科書や辞書などに印刷されているとおりでないと、安心して「正解」とできないだけののことなのです」と。そして、「環」の下の縦棒(ハネると誤りにする先生がいる)を例にとり、清の康煕帝が命じて策定させた字書でも、戦前の日本の活字の見本でもハネがあったこと、戦後ハネないようになったのは「当用漢字字体表」でたまたまハネがなくそれが印刷字体になったからに過ぎず、印刷と手書きは違っても構わないこと(政府の「常用漢字表」も容認)を明らかにしている。筆順も慣習に過ぎず、文部省が一つの手引き(これと異なる筆順もOKと明記)として策定したものが、同様の著述がないために、いつの間にか絶対化されてしまったものにすぎないことを明らかにしている。要するに、漢字のハネや書順にうるさい教師たちは、自信が持てないため拠り所を「権威」に求めたに過ぎないわけだ。
この他、漢字の中には、権力者のこじつけや気まぐれで作られたものがある等、様々な「雑学」が楽しめる。この本で感じるのは、漢字というものは、一つのルールに従わなければならない堅苦しいものではなく、もっと柔軟に使われるものである、ということだ。タイトルが示すとおり、気楽に読める本となっているので、気が向いた時にパラパラと読んでみてもよいだろう。