日本語論というものは、誰もが強い思い入れがあるために、下手をするとなんの根拠もない言いっ放しの本になってしまいがちです。
ということで、その悪い面が出ているように思えてならないのが、本書です。
読ませるところもあります。
明治の文豪たちがいかに日本語と格闘してきたかなどは、知らなかったことも多く、共感できる考え方も多かったです。
もとより無節操な漢字の氾濫については、私もあまり快く思っていないからこそ、本書を買ったわけですから・・・。
ですが、「では漢字の何が悪いのか」を語ろうとすると、とたんに首をひねりたくなるような記述が増えてきます。
たとえば漢字を使わないことで発展したというトルコについての記述。
漢字を使わなかったからこそトルコが独自の文化を保ちえたと言いつつ、中央アジアのトルコ系民族に対してトルコ人がトルコ語を広めようとしていることを賞賛するような記述があるのですが、それが別の形での少数言語排除だということにはまったく思い至らないのでしょうか。
また、漢字から脱却した民族こそ栄えるとして、韓国を始め満洲、西夏、契丹などを挙げているが、韓国はともかく、その他の民族がたとえば日本より民族的に栄えていると、どのような視点から言い切れるのでしょうか。
そもそも、「漢字なんて使わなくても日本語で十二分に表現できる」「なのに漢字を使おうなどというのはエセ知識人」というようなことを書いているのに、自らもしょっちゅうドイツ語を文章内に挟み込もうとするのだから、漢字かぶれの人のこと、言えるんでしょうか?
と、とにかく突っ込みどころだらけの本でした。
実は私は著者の本を何冊も読んでいるのですが、この本はちょっと・・・。