読書を心から愛する外法星導師と万を超える書物を内に秘める本の精霊が織り成すビブリオ・ファンタジー第三巻。一、二巻に比べると正直、ちょっと物足りない出来だったかと思います。今回は、ジグウォルが本格的に聖堂と敵対することがメインなので、「本探し」や「読書」の要素がほとんど無かったためと思われます。この作品独特のものだと思いますし、持ち味が生かされなかった形ですね。次巻以降、そのあたりはきちんと描かれるようですし、問題は無いでしょう。
恩も恨みもあるため、「半分だけ倒したい」という複雑な想いを聖堂に対して抱くジグウォル。そんな彼に、聖堂への復讐を決意させた友人オルトの死。仇である枢機卿パラセンダルに単身挑むジグウォルですが、そんな彼の前に、オルトの妹、サリナが立ちはだかる。彼女は、ジグウォルが兄を殺したと疑っていた。
なんというか、こういう誤解ってよくある形ですよね。わざと恨まれるような態度を示すジグウォルも不器用な性格だと思います。巻き込まないために、レジィナに黙っていたところもその一例だと思います。ジグウォルが小者臭たっぷりの助祭に傷つけられたリシェルを前にして、自分との仲を疑われないためにあえて嘘をつく場面とかもそうだと思います。リシェルもそこのところはわかっているようで、ちょっと安心しましたね。
明確に聖堂と敵対し、緊迫感が増すようにも思いますが、あまりシリアスになりすぎないところがこの作品の一つの特徴だと思います。きっと、ジグウォルが過去に悲劇を抱えている者にありがちな軽さを装うタイプではなく、本当に軽い一面を持っているからだと思います。「復讐だけの人生を送るつもりはない」という姿勢もちょっと珍しいかと思います。やっぱり、彼は読書が本当に大好きなのでしょう。第一部が今回で終了するとのことで、次巻からまた新たな展開になるようです。次巻も楽しみに待ちたいと思います。