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カフカ風の作品(白昼)あり、ボルヘス風の作品(バベル)あり、ドスト地下室手記風の作品(最後の変身)あり、ゴーゴリ鼻風の作品(くしゃみ)あり…。おそらく平野氏が目標としている…あるいは素晴らしいと思った古今東西の古典傑作らを下敷きにし、自身の筆力の幅広さ、というより作品世界の広さを開拓してるかのようです。
しかし何でしょうか。これら古今東西傑作を模倣した平野氏の作品群を見ていると、何やら文学博物館、いえいえ、スーパーマーケットに「バランスよく」陳列されてる食料品を目にしてるかのようです。これではまるでロールプレイングゲームで「この作品は戦士、この短編は魔法使い、次の短編は武道家」と子供じみたコスチュームプレイではないですか。それらを個性と呼ぶのは難しいでしょう。
果たして海外作家のまねっこでなく「彼だけの」世界を見せてくれる(それも確固とした)そんな日は来るのでしょうか?
著者はこんなものを書くようになってしまったのかという残念な思いで一杯です。月並みな表現ですが、この著書から伝わってくる作家像は、独りよがりで芸術家気取りの一人の青年作家先生にしかすぎません。著者の欠点は現実社会感覚の欠如で、それがプラスに作用する時はそれなりの作品を生むのですが、齢30が近づき、未だにこの程度ではと、悔しい思いがします。往々にして作家は出版社・編集者達に煽てられのせられて、自分は偉大なのだと思いこんでしまう傾向があり、またそうでないと書けないという事情もありましょうが、彼は見事にそれに嵌ってしまった。『文學界』8月号のインタビューでの何と尊大なことか。たぶんこの書を手にしたほとんどの人が「わからない」と思うでしょう。でも口にはしません。あの「裸の王様」の寓意通りです。お買い求めになる前に、是非立ち読みをお勧めします。9編の作品中、立ち読みで読み通すことができる作品が数編あります。……以上、正直な私の感想です。
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