結論から言ってしまうと、痛快で面白い本である。
世の中に数多ある美化の衣を剥ぎ取ってみると、そこにあるのはどうしようもない「サイテー」ぶりを晒す男ばかり。源氏とは確かにそういう物語である。
(著者も言うとおり、だからこそ読み継がれているのであるが。)
著者の自分史とオーバーラップさせつつ、親子関係の観点から読み解いていくという視点も面白いし、薫と浮舟のすれ違いに焦点を絞りつつ展開される最終章も読ませる。
不満が残るとすれば、肝心の光源氏に関してである。確かに光源氏の晩年は、若かりし頃に比べて暗いものであったことは間違いない。だが、光源氏は単に、そうした暗い晩年に絶望しつつ、老醜を晒して死んでいったわけではない。出家の直前、かつてにも優るとも劣らない「光る君」として描写されていることに、筆者の関心が向いていないのは残念である。浮舟の身の処し方の先行モデルは、この光源氏にあると思うのだが…。
そのあたりに関しては、大和和紀の読み込みのほうに軍配を上げたい。