中秋の名月の夜、愛犬セタを連れ散歩に出たまりは、豊平川の川原で奇妙な男に出会う。
杉坂小弥太重則と名乗る男は、300年前の江戸時代からタイムスリップしてきた武士だった。
まりと小弥太の、不思議な関係が始まる・・・。
昭和50年代の札幌が舞台。その当時は私も札幌に住んでいたので、懐かしい気持ちで読んだ。
300年の時を超えやってきた若者の目に、はたして札幌はどう映ったのか?まりやまりの
祖母とのふれあいの中、小弥太はしだいに現代の生活になじんでいく。心の中では激しい葛藤や
苦悩が渦巻いていただろう。妻子と別れなければならなかった寂しさもあっただろう。だが彼は、
武士としての毅然とした態度を崩さない。まりは憎まれ口をききながら、そんな小弥太を温かく
見守る。やがて、まりと小弥太との間に芽生える感情・・・。けれど、別れのときは刻一刻と迫る。
ふたりがどんなに努力しても、「時間」という乗り越えられない壁があるのは悲しかった。読んで
いて切なかったが、ほのぼのとした温もりも感じる作品だった。