線路は増えない、増便の余地はない。満員電車の解消なんて不可能と思っていたが、本書で総2階建て電車や3線運行、立ち席と着席の料金区別などの提言が出て、こんなに改良の余地があったのかと感心した。2階建てにすると乗客は増えるが、ドアの数は同じで出入りに時間がかかってしまうのだが、著者は2階にもドアをつけろという。2階にドア付けたって出られない、じゃあ駅も2階建てに。都心でどれだけ実現可能性があるかはともかく、各鉄道会社も改良の研究を始めてほしいと思った。
ただ、「現状の鉄道運賃は安すぎる。もっと引き上げよ」とし、満員電車解消のために1往復400円の追加負担を求めているのだが、この主張には非常に違和感がある。どこの先進国も20キロ程度以内の移動は200円程度だし、首都圏の鉄道事業者の多くは日本企業としては高水準といえる、10%前後の経常利益率を確保している。また、都心への自動車通勤、通学ができない現状にあって、鉄道事業者は路線地域の都心への交通アクセスを独占しているといえる。独占的な事業者が、自社サービス向上のために、利用者だけに負担を転嫁するというのは、いかにも鉄道事業者しか向いていない提案である。また、割安な通勤通学定期を「実質国が押し付けているもので、時代に合わない」といって、著者は見返りもない値上げを求めるが、利用者のロイヤリティーを失うもので、決して経営上得策と思えない。
さらに、旧国鉄の巨額赤字について「物価上昇に見合った値上げができなかったから」というが、利用者の多くの実感としては、国営という足かせによる経営政策の硬直化、不採算路線の建設・維持が要因ではないだろうか。他の民鉄は別に経営危機になど陥っていないのだから。
鉄道事業者寄りな著者の鉄道経営についての主張には賛成できない点が多いのだが、満員電車を解消する技術的な改革には、うなずける点が多かった。