歴史群像シリーズから、湾岸戦争についての記事を集めてある。2003年のイラク戦争や、1980年に開始されたイラン・イラク戦争の特集もある。
軍事面での解説が優れている。米軍の圧倒的な強さには、ベトナム戦争の苦い記憶と東西冷戦において物量面で東側に劣っていたという事情から、新型兵器の開発によって質的な優位を確保しようとした背景があった。特に「ビッグファイブ」と呼ばれた、新型戦車、新型歩兵戦闘車、新型攻撃ヘリ、新型地対空ミサイルに、ステルス性を備えたF-117とE-8地上目標捜索監視機、さらには各種人工衛星を組み合わせた作戦が大変効果的だったことが改めて理解できた。特に、高価なF-117やM1A1は、費用効果の面では大成功と分析されている点は印象に残った。
また、イラン・イラク戦争とその背景の解説から、その後のイラクのクウェート侵略がつながった歴史として認識できた。石油で稼いだ外貨を投資に回して経済を反映させていたクウェートとは違い、イラクは石油の一次収入が頼りであった上に軍事の負担が非常に重いという事情があった。また、クルド人の置かれた複雑な状況、多国籍軍のアラブへの配慮、サダム・フセインの生い立ち、シュワルツコプやパウエルの略歴についても書かれている。
アメリカ軍の圧倒的な強さを世界に印象付けた湾岸戦争だったが、フセイン後のイラク統治の混迷と占領後のアメリカ軍のテロに対する苦戦を見ると、政治的な意味での評価が定まるためにはもう少し時間が必要なのかもしれない。