隠岐島の伝統の20年に一度の相撲大会を描いた小説。読みやすく数日で読破可能です。内容のほとんどが相撲の取り組みです。この本を読めば、横綱朝青龍がよく語っていたように、相撲とは命がけの真剣勝負であること、また、サイドストーリーよりも、土俵の上での闘う姿そのものが人々の感動を呼ぶものであるということがわかると思われます。最近の相撲の報道のされ方は、勝負自体の素晴らしさはまったく評価されず、ゴシップばかりがとりあげられてますが、格闘技としての相撲の凄さを、この本であらためて一般のファンには知って欲しいところです。ただ、相撲を多少知っている人でないと、相撲の技の数々が説明なしに書かれており、比較的高度な技術的な描写もあるので、楽しめないかもしれません。その反面、相撲を熟知している人にとっては、専門用語の誤まった使い方(たとえば、“かばい手“を相手をかばうためではなく、自分のからだを守るために使っているなど)や、不自然な技の応酬(特に”出し投げ”の使い方が疑問。“出し投げの打ち合い”といった現実には在り難い表現があります)、取り組み時間の異常な長さ、取り直しの多さ、技の多彩すぎるところ(あたかも“初っ切り“が実戦で行われているようです。一人の力士が押し相撲も四つ相撲もできれば、閂も足技も二枚蹴りまでできてしまう。しかもプロではない数年しか相撲をとったことのないアマチュア力士が。)などがあり、とても現実におこりうる取り組みとは思えないなどの難点はあります。ただ、この小説の楽しみ方は、そうした非現実的な部分には目を覆って、もし相撲が柔道やレスリングのように長い時間戦うことが可能なスポーツであればと考え、一つ一つの技の応酬を堪能するという姿勢だと思われます。紹介されることのない隠岐島の相撲の紹介ということでも、相撲ファンとしては読んでおきたい一冊です。