「温泉教授」松田忠徳氏といえば、特に日経新聞の読者は土曜日の日経プラスワンでうらやましい温泉巡りの旅を仕事でしている人というイメージを持っている人が多いのではないだろうか。それだけではなく、著者は日本の温泉地の堕落を憂い、警鐘を鳴らし、正しい温泉のあり方を示唆する人である。本書は危機感をもって、「温泉」の定義からして怪しい温泉法の欠陥、それに便乗する心ない温泉業者の存在、情報開示不足で得体の知れない熱水を温泉と称して供給する風潮を告発する。白骨温泉入浴剤事件のような温泉地の信用失墜は起こるべくして起こったと言えよう。著者は他の本でも同様の論陣をはっているが、同工違曲の感があり、日本の温泉地が抱える問題の理解は本書で十分事足りる。出版は約10年前だが、いまだに重みのある本だと私は思う。