「温泉好きが多いという旅行者サイドの実態と受け入れ側の温泉地の実状、このギャップはいったい何を意味しているのか」と冒頭で問題提起するこの本は、多くのケ−ススタディで得た知恵や実際の行動のためのヒントを満載しており、現代のすべての温泉地関係者にとって必読の書と言えます。
著者は、「温泉地、温泉旅館にも明らかにコモディティ化が起きて」おり、「『温泉が好き』『温泉旅行に行きたい』という言葉の中にある温泉。表現は同じであってもその意味には変化が起きているのではないだろうか」、「温泉が温泉地と分けて考えられていることを温泉地サイドはもっと深刻にとらえる必要がある」と指摘した上で、今後の温泉地の方向性を例えば以下のように示しています。
■「今、温泉地は、新しい価値を創造し、現代的な存在意義を確立しなければならない時にきている」■「総合的に満足度の高い温泉地とは、その温泉地の個性・特徴がきちんと認知され、発揮できている温泉地」■「温泉地とは、気晴らし、ひと時の開放だけでなく、人生をより良くするための重要な価値をもった存在になるはず」なお、著者はそのケ−ススタディが示す成功事例の共通点として、「温泉とか温泉地とは何か、といった原点に立ち戻り、その魅力を改めて考えてみようとする動き」や「住民として誇れる温泉地とは何かを考え地域の一員としてその実現に向けた努力を進める動き」等を挙げていて、その他、この本には例えば以下のような興味深い指摘が満載されています。■「旅とは、違う文化を訪ねたい欲求」■「こころの豊かさを感じられるような観光」■「最近の観光では、地域の人の熱い思いやこだわりの心に共感したり魅せられて旅行する人が増えている」■「中核的空間としての広場」■「確実に、精神的なものに価値を見出す時代がやってきている。その精神的な豊かさの価値を気づかせる大きな可能性をもっているのが観光」