日本国内の様々な温泉地を旅した田山花袋の紀行文。
温泉そのものの批評も行われていますが、温泉地にたどり着くまでの足取り、移動中の情景描写に重きが置かれています。このため、いろいろな地名が出てきます。地理的な状況や料理の善し悪しについても田山花袋独自の見解が述べてあり、彼自身の好みが素直に伝わりました。温泉を取り巻く自然に溶け込んだ田山花袋の目で見た情景描写には癖がなく、私は「遠くの温泉に行きたい」という旅情がかきたてられました。地図を見ながら「こういう足取りで移動したのか」などと点検しながら読むのも楽しいです。
本の下欄に「現在では電車が開通したので移動が便利になった」などのコメントがあるのも面白いです。「欄干」という言葉が何度か出てきますが、この言葉があることにより、温泉の情緒があふれ、温泉の情景が頭の中で想像されました。