7世紀末から10世紀前半までの二百数十年間、今の中国東北地方から朝鮮半島北部にかけては、「海東盛国」と称された渤海国が支配するところでした。この国、「首領」と呼ばれる在地豪族層を政治的統合の基礎とする特殊な統治構造をもっていたようですが、民族的出自が必ずしもハッキリしないほか、社会的・文化的な状況も未だ十分には解明されておらず、謎のベールに包まれた不思議な存在です。
本書は、中国・日本・朝鮮に伝わる史料をもとに、渤海国の誕生から解体に至るまでの歩みをコンパクトに整理したものです。著者は、渤海を「唐の模倣や衛星国と見るのではなく、また、日本との外交に重きをおくのでもなく」、個性的な存在として捉えるよう努めたとしていますが、やはり内容的には、唐朝の冊封体制の中における位置付けや遣使・貿易の状況など、対外関係が大きなウェイトを占めています。史料の関係上、致し方のないことなのでしょうか。
遣使や貿易の際に如何なる物品・書状の交換がなされたか、大使以下の官職は何であったか、などの事実関係の整理に相当の紙幅が割かれており、些か小うるさい感じがします。渤海国に関する一般向けの書物は珍しいので、読んで面白いか否かはともかく、この国に興味を持つ向きには貴重な一冊と言えるかも知れません。