筆者渡部昇一の三十年以前の著作「日本史から見た日本人」「日本語のこころ」を更に磨きをかけてできたのが今回の著作ではないかと思ひます。 現代日本人が忘却せんとしてゐる日本神話の価値と意義を今に続く日本文化と日本思想の中に正統な位置づけをしてくれたのは、とても有難い事であったと感じます。 そして、日本人の祖先の源流が南方系の海洋民族だったであらうといふ考察。任那、百済、済州島といった倭と分類された地域が原日本文化を共有する地域だったであらうといふ考察。さういった興味深い考察は、一つ一つ得心が行きました。 また、今回新たに聖徳太子の評価を深め、その優秀性、コンスティトゥーションとしての十七条憲法の起きて来た背景(皇位をめぐる不安定さと部族対立)を踏まへた言及は劃期的内容となってゐます。 更には、シナの漢字文化と和歌を基本とした言霊文化との絶妙の混淆で生まれた日本文化の展開考察も素晴しいと感じました。かういった大きなスケールな史論は、日本史全史の完結篇にふさはしいロマン高い作品になってゐると確信します。