山口組の五代目組長の渡辺氏のインタビューをまとめたもの。渡辺氏は少年院や不良少年グループや劣悪な家庭環境とは無縁だったそうな。本書の価値は何と言っても希少性だろう。この手の情報で発言者の名前まで明示されているものは少ない。ただ、タイトルでは「経営学」となっているけど経営に関する話は最初と最後に少し載っているだけで、基本的には渡辺氏がどういう人かを探っている本である。あと、インタビュー中の発言が一部の固有名詞が伏せられていることを除いてそのまんま掲載されているようなので非常に読みにくい。神戸地方の方言(漫才師の関西弁ではない)までそのまんまなので非常によみにくい。
読んでいてわかるのは、普通の組織やら企業やらと共通する部分がけっこう多いということ。幹部にもなると、その辺の下手なお偉いさんよりもマトモかもしれないということ。山口組幹部から経営感覚と度胸と部下への思いやりを取り除いたら…と考えてみると色々と面白い。思い浮かぶ人がけっこういる。もちろん分かりやすい違法行為と切り離せない経営形態なんて褒められたものじゃないが、それを理由に全てが普通の組織よりダメだというのも間違いであることがよくわかる。
本書で最も残念なのは経営やお金のことがほんの少ししか書かれていないこと。暴力団経営もお金とは切り離せないことは強調されているけど具体的な記述に乏しいのが非常に残念だ。海外との資金のやりとり、末端の構成員のしのぎ(商売や資金繰り)の実態、少子化によるリクルーティング状況の変化、税務署とのやりとり、情報の精度を保つのは何かなども書かれていたらムチャクチャ面白い本になっていたと思う。さすがにそこまで具体的に話してもらうのは無理だろうが。