北海道やロシアにある渡り鳥の飛来地を訪ね歩く著者が、鳥の“渡り”、さらには人間の“渡り”について思いをめぐらしたエッセイが七つ、収められています。
本書の頁をひもといていきながら何度も思い浮かべたのが、かなり前に借りて見たジャック・ペラン監督のドキュメンタリー映画『WATARIDORI』。空を旅しながら地球を渡ってゆく鳥たちの目線で捉えた映画の映像と、オオワシをはじめとする鳥たちが眺める風景、彼らの旅路に思いを馳せる著者の眼差しがオーバーラップするように感じたんですね。第一章「風を測る」の中、著者が発した問いかけの文章がひとつ、本エッセイ集の根幹となっている気がしました。
<「さあ」、と自身を奮い立たせるようにして眼差しの焦点を彼方へ合わせる。旅立つ、ということを、長くても短くてもある程度住み慣れた場所を離れる、ということを、決意するときのエネルギーはどこから湧き起こってくるのだろう。> p.12
本書は、『考える人』(2006年夏号〜2009年冬号)の連載に手を入れ、最終章「もっと違う場所・帰りたい場所」を書き下ろした一冊。この書き下ろしの最終章が読みごたえ、ありましたね。北海道・斜里に暮らす門間あや子さんが語る話を筆記した件りなど、読んでいてわくわくしました。
とても残念だったのは、本単行本に地図、写真が全くなかったこと。私はアトラスの『日本地図帳』『世界地図帳』を何度も開きながら著者が訪れたルートをたどって行きましたが、本書の体裁・編集として、地図ならびに渡り鳥の写真(できれば、カラー写真か図版)はあって欲しかったです。
それと、ルビの振っていない地名で、「これは何て読むんだろう?」と引っかかったものがありました。第一章がはじまってすぐ、9頁の二行目に<女満別空港>という地名があります。これが読めなかった。地図帳で調べて、「ああ、“めまんべつ”と読むのか」と。きちんとルビが振ってある地名もあるので、「これは読めるだろう」という判断なのか、それとも単なる抜けなのか。ちょっと気になりました。