32歳の主人公は、国立大学の教育学部を出たけど就職難で食品会社に入って
ちんたらと使えない営業マンを10年もやっている。ところがある日、
寿退社する先輩の営業ウーマンから、渋谷エリアの担当を引き継ぐことになった。
渋谷…それは、12歳のころまで住んでいた僕のふるさと。そして地価高騰で
立ち去った苦い思い出の地。それ以来足を踏み入れず、デートも他の町でしてきたのに…
というわけで、はからずも、営業マンとして「里帰り」をせざるを得なくなった彼が
久しぶりに先輩に連れられて訪れた渋谷で出会ったのは…?
渋谷を舞台にした営業引継ぎ小説。「笑う招き猫」や「凸凹デイズ」などで
冴えない仕事だけど頑張る女の子、を生き生きと描いてきた山本さんだけど
男性主人公だとその生き生き度がアップしていて更に面白い(やはり男性作家が
女性を描くときってどこか優しいけど、男→オトコの場合は結構そのへん、
シビアなので読んでいるときの小気味よさが2割増しだったように感じた)。
取引先の飲食店の怪しげなオーナーたち、渋谷に住み続けていたかつての
幼馴染、そして会社の同僚や、隣のオフィスにいるちょっと気に入ってる女の子…
一癖も二癖もある超個性派キャラクターたちにもまれるうちに、仕事や会社に
たいして、ちょっとだけ本気になっている主人公…その「ちょっとだけ」の
前進が「自分もこれくらいなら頑張っちゃえるかも」と読者を元気にするのです。
「凸凹デイズ」のあのキャラがこんな場面で?という意外な作品同士のリンクにも
ご注目(著者は手塚漫画みたいに、あの作品のキャラがこっちにも顔出して…
みたいなことがやりたくていろいろこまめに遊んでます)!