清朝というと、あとがきでも書かれているように《外国の侵略に対して何らなすすべもなかった腐敗堕落した王朝》という印象でしたが、一読、18世紀に起こった人口の急激な増加に起因した数々の内乱に対処しつつ、近代化をめざしたものの、力及ばずして倒れた悲運の王朝というイメージに変わりました。
乾隆帝と嘉慶帝の時代には「乾嘉の学」と呼ばれる考証学も盛んで、嘉慶帝はあまり良く知りませんでしたが、『己を罪する詔』や詩集からも、生真面目に政務に取り組んでいる姿がうかがえて、好感を持ちました。しかし、17世紀末に1億人台だった人口は19世紀には4億人を超えます。こうした人口増に耕作地拡大が追いつかず、民衆の生活が苦しくなってきたところで道光帝(在位:1820年-1850年)は制度疲労を起こした統治機構を引き継がなければならなくなり、さらには欧米の資本主義発達という波が押し寄せます。
太平天国の乱も、ある程度は知っていましたが、洪秀全が天王府に側室と引きこもったのに対し、楊秀清というシャーマンのような青年が神がかりになって指導するようになったというのは知りませんでした。さらに清朝には中央アジアでの回漢対立の波が押し寄せます。
曾国藩の「元のフビライが10万の軍で攻めたのに1隻も帰らなかっただけでなく、明時代には倭寇で大きな被害を受けた。日本は中国を恐れる心を持っていない。朝鮮、琉球、越南のような臣属の国とは違う」という日本観も興味深かった(p.114-)。朝鮮併合も清朝の側から見ると、より理解しやすくなると感じました。全巻の完結が待ち遠しいです。