木下牧子さんの美しいメロディとハーモニーが詰まった曲集です。比較的簡単な譜面ですが、しっかりと歌うのには練習量が必要となるでしょう。
冒頭の「いっしょに」のみアカペラの混声4部で、「秋のまんなかで」「雨」「あいたくて」「はじまり」はピアノ伴奏がついています。ラストの「はじまり」は特に中高生を中心に愛されている曲です。
「いっしょに」の透明感が好きです。ホ長調という珍しい調性は、音域も考慮されたのでしょうが、この透き通るような凛としたイメージを表現するために用いられたのでは思うほどです。工藤直子さんの詩はこの大切な歌詞を歌いたいという気持ちにさせる内容です。敬虔な気持ちで歌うことに向き合いたいと思わせる名曲だと思っています。
ラストの「はじまり」は、バード・アイ(鳥瞰)のように、前方を俯瞰して、現実世界から少し離れて心を解き放っているのが見て取れます。見ている対象物がどんどん高くなり、遥か彼方に視線を送り、人知を超えた世界へといざなってくれるかのように浮遊していっています。この捉えきれないような壮大で雄大な歌詞を見ていますと、この地球上の細かい対象物には、目もくれていないのでは、と思ったりもします。
♪光がかけぬけた♪という躍動感とスピード感がこの合唱曲の生命線でしょう。ピアノ伴奏が合唱を引っ張り、合唱が聴衆を包みこむような大きなエネルギーの発露が必要だと思います。それが表現できて始めて、歌い手と聴衆の一体感が得られ、感動がもたらされると思います。
自然を愛し、動植物を愛して多くの作品を残してこられた工藤直子さんの視点は、日常の人間の悩みとは次元が違う所に存在しています。壮大な詩と重厚な曲がこの「はじまり」の個性であり特徴なのは間違いありません。