北森鴻氏の、骨董・美術系の流れの、絵画修復師の物語。
天才的な技を持った絵画の修復師が巻き込まれていく、美術品にまつわる物語。個々の美術品がもつ人間の物語と、繰り広げられていく美の技に、思わず引き込まれます。
物語の中に漂うのは、美をめぐる人間というもののほのぐらい影。美と、富と…。芸術を生むのは人間で、生ませるのも人間で。そしてそこに巣くう魑魅魍魎もまた、人間であって。
修復は、原作者以上の腕が無ければ出来ないという、そんな修復者の技。そして、作者と同様の心を持ってこそ為し得る修復。
そんな修復者が生み出す作品は、真作なのか贋作なのか。果たして贋作者によって創られた新しい作品は、未発見の真作と区別がつかなくなってしまうのか。
或いは、贋作者は、贋作が贋作と見分けられる様にその印を作品に刻むのか。
真贋を見極める目を持つということは、真贋を偽る能力もあるということであって。
…物語を支える、その「美の技」の世界も、非常に面白く、読み応えがありました。
世に現れない、美術品や絵画、遺跡など、実は数多存在するのだろうか、などと夢想しつつ。
1枚の絵の分割とか、実際にそんなことが行われたりしている世界があるのでしょうか。絵の下のもう一枚の絵、などは聞きますが。
そして、物語を彩る登場人物達もまた、なんとも魅力的で。
続編を、是非是非読みたいです。…北村氏には、あれもこれも続編を書いて貰いたい…。