内容紹介
「テレビがなくたって、洗濯機がなくたって、人間は充分幸福な生活が送れるんです※」──勝又進 「被曝労働をする者がいなければ、原発を回して行けないのなら、本来彼らはたとえ“フクシマ・フィフティ”でなくとも、もっと優遇され尊敬されてもいいはずではないのか」阿部幸弘(解説より) 郷里東北の土俗的な生活と人々を描き、2006年に日本漫画家協会賞・大賞を受賞した勝又進が、綿密な取材のもと、原発ジプシーの実態を捉えた異色短編二編を巻頭収録。 大学院で原子核物理を学び、早くから原発の危険性を認識して福島第一、第二原発をはじめとする各地の原発を取材。「原発はなぜこわいか」「脱原発のエネルギー計画」(いずれも高文研)の挿絵を担当するなど、地味ながら一貫した活動を続けていた著者の作品の中から、短編9編をセレクト。土俗的作品、私マンガ的作品とそれぞれ異なる作品傾向の中から浮かび上がる勝又進の精神の軌跡を追う。 ※『「COMICばく」とつげ義春』夜久弘・福武書店・89年より
著者について
著者より: だいぶ前から原発には興味があって、資料なんかは集めていたし、実際に原発労働者の現場を取材したりしている。 原発は、建設中は、原子炉格納容器まで見ることができるし、運転中は、作業員が服を着替える所くらいまではいけるんですよ。これまで、五回行ったかな。どこの原発だったかな、コントロールセンターに鈴木義司の色紙が、飾ってありましたよ。カメラを向けたら、係の人に止められましたがね。 原発を見た印象というのはね、僕の場合、否定的だから、少し先入観で見ているところもあるけど、外見は、キレイなんですが、中は、普通の工場のような感じがします。乱雑というのか、配線や配管が剥き出しで、ケーブルがのた打ち回っていたり、決して美しいとも思わないし、機能美があるとも感じられない。最先端技術の現場という気はしないですね。 原発の地元の人に話を聞くと、ガンになったり、無脳児が生まれたりしている話を聞きます。だけど、そういうことは、あまり広くは伝わってはいない。病院などでもみ消したりしているらしいんですよね。 僕は、「リトル・ボーイ」でそうした原発労働の現場の実情を描きたかったんですが、半分も表現できてないですね。僕は、マンガを通して被曝の怖さを描きたいんですよ。 でもね、原発は、マンガとしてはそんなに面白いと思うテーマではないんですよ。そんなに面白いものじゃないですから。ただ、無視している訳にはいかないでしょう。だから、こういうのは、気長にやっていくのが一番だと思っています。 「コミックボックス」1990年1月号(まんがと放射能特集)