近年、忘れ去られそうな重要作家の第一が深沢七郎です。次いで『抱擁家族』の小島信夫、『楡家の人びと』の北杜夫。昭和のもっとも重要な小説家ですが、残念ながら入手しやすいかたちの本が無い。一部のカルト評論の対象にはなっていますが、一般の人が作品を読めないのでどうしようもありません。深沢七郎の『笛吹川』『庶民列伝』『人生滅亡教対談』など代表作の文庫などが品切れ絶版。傑作とはいえませんが『風流夢譚』が読めない状況も変です。その渇きが少し癒される本が「流」「転」として出版されました。「流」に収録された小説はどれも途方もない作品です。例えば「東北の神武たち」は、村で人間扱いされていない次男以降の男たちが、夫の怨霊払いの遺言で遺された妻にセックスしてもらうものの、体が臭い利助だけは外されてしまう悲痛な物語。ストリップ小屋の裏方さんの生態を描いた「千秋楽」は、まるで神代辰巳監督の映画のようです。二巻だけでなく、これらを皮切りに「ちくま文庫」には頑張って欲しいものです。