深夜にしか営業しない、繁華街の一隅にある食堂にて
そこに集まる一癖も二癖もある客たちが
これまた訳アリな店の主人と織り成す現代の人情物。
店には豚汁定食以外の固定メニューは無く、
「あとは勝手に注文してくれりゃあ、できるもんなら作るよ」という方針で
必要以上に人の事情に立ち入らないという意味では一見ドライに、
しかし仄かに暖かく営業している。
個々のエピソードは一貫して店の中でしか展開しない。
しかし「食にまつわる想い出」を持たない人間がこの世に居る訳は無く、
一人ひとりの過去が様々なメニューとともに立ち現れ、
赤の他人にも本音をポロリと出し易い深夜という時間設定も相まって
郷愁に満ちた豊穣な舌の上の小世界が毎話展開する。
本巻はその第五巻。ミートソース・クリームシチュー・カレーうどんと
置き去りにされてきた真の昭和がここにはある。
僅か10ページながら、冒頭の麻婆豆腐のエピソードは
二つの人生が巧妙にクロスする珠玉の出来。
伏線の張り方と不意打ちのラストには舌を巻くしかない。