’65年に書かれた冒険アクション小説。その年のCWA(英国推理作家協会)最優秀英国作品賞を受賞しており、常にオールタイムベストに名を連ねている。
今回表紙カバーがリニューアルされたことを期に手にとってみた。
元英国情報部員のルイス・ケインはマガンハルトという実業家をリヒテンシュタインへ連れてゆく仕事を請け負う。目的地には決まった時刻までに着かなければならず、しかもこの男は、彼の到着を快く思わない者から狙われ、かつフランス警察からも追われていた。ケインは護衛役のガンマンを従え、準備万端出発する。彼らの、当初の目的を達成するためのみならず、生き残る闘いが始まる・・・。
本書の魅力を三つ挙げるとすれば、まずはプロット展開の妙味だろう。予期せぬ方向から次々に攻撃を加えてくる敵、ケインは予定を大幅に逸脱して、臨機応変に対処しなければならない。そのたびに局面ががらりと変わる。そしてラストで明らかになる真相には唖然とする。
次は、派手なアクションの面白さを背景にした人物造形である。一人称で語られるケインの目を通して、アル中に悩む護衛役のガンマンの陰影に富んだキャラクターを描き出した部分は、何よりも秀逸である。
最後は小道具・大道具である。ケインが愛用する前世紀の遺物のようなモーゼル銃を筆頭として、車はシトロエンからロールスロイスまで登場する。
本書は、見事に男のドラマを描ききった、もはや古典的名作といってもいい逸品である。