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56 人中、53人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
インドに行きたくなります。,
By sean_winnie (東京都目黒区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 深い河 (講談社文庫) (文庫)
遠藤周作は「沈黙」を呼んで以来久しくご無沙汰していたが、分量もすくなく読みやすく、しかも泣けます。かなりのオススメ。物語は突然の妻の死で幕をあける。男は妻の突然の死を受け入れる事が出来ない、典型的な日本人の夫らしく妻をいたわり、愛する事をしてこなかった彼が気づいたものは「空気のようだ」と思っていた妻が、本当の空気のようになくてはならないものであったという事実であった。おとなしく、感情をあらわにすることのなかった妻が、乱れるようにして吐いた最後の言葉を追って彼はガンジス川へ旅立つ「必ず生まれ変わるから、この世のどこかに・・・。」 この本では五人の日本人がそれぞれの理由を背負ってインドへ行く。あるものは妻の「転生」というおよそありえない可能性を追って。あるものは太平洋戦争中ビルマで戦って死んでいった親友を弔うため。またあるものは、自分には信じられない「何か」を信じ、そのために「破門」の烙印さえ押された神父の友人を探しに。 私を含め、多くの日本人は無神論者であり基督教の言う神なるものの存在を信じない。しかし、本当に絶望的な時や何かにすがりたい時、誰しも一度は人間ではない物に祈った事があるのではないだろうか。テストの結果発表を見るとき、家族の危篤を伝えられたとき、罪から逃げようとしている時。どんな世界の、どんな階層の人間でも心に苦しみを持ち、その苦しみから逃れるために何かにすがり、祈る。その何かがこの本の中では「玉ねぎ」であり「深い河」ガンジス川なのだろう。 この本の一つのテーマは「転生」だが、物語から伝わってくるのはそれだけではない。 人間の感情には多くのグレーゾーンが存在し、誰もがその葛藤に悩まされている。人間の心が描き出す愛憎は水と油のようなものではない。たまらなく愛しい思いの中にも、深い憎しみが隠されているはず。様々な気づかなかった事に気づかせてくれる名作である。
24 人中、22人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
遠藤周作のキリスト教観が心地よい,
By KY (千葉県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 深い河 (講談社文庫) (文庫)
キリスト教に汎神論をくわえた遠藤周作独自の解釈がストーリーの芯になっている。主題の性質上、死、愛、宗教、輪廻など、いわゆる「重い」題材が多く含まれているけれども実は読みやすい。物語の主な舞台をインドにしたことも含めて、やはり遠藤周作は素晴らしい書き手だと思う。僕は、遠藤周作が『イエスの生涯』で示した「『奇跡』抜きでもちゃんと成立するキリスト観」が大好きなので、この本も一気に読んでしまった。 登場人物の「ヨーロッパの考え方はあまりに明晰で論理的(中略)、東洋人のぼくには何かが見落とされているように思え、従いていけなかったのです」という言葉と、「善悪不二」という仏教用語が印象的。 読みやすさとの引き換えだから仕方ないのだけど、そんなにドラマチックにしなくてもと思ったのと、あと少しだけ話のつづきを書いていて欲しかったので★4つ。
14 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
この混沌さが性に合う。,
By tomomisaekiphd (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 深い河 (講談社文庫) (文庫)
妻の臨終の言葉に導かれてインド訪問を決意した「磯部の場合」では「転生輪廻」を、若い頃の苦い思い出の対象である大津を心の端に求める「美津子の場合」では「心の充足」を、幼少期の心の痛みから妻にさえ苦しみや悲しみを打ち明けらることができない童話作家「沼田の場合」では「人生の孤独」を、第二次世界大戦中の出来事から苦悩の内に死んでいった戦友、塚田を思いやる「木口の場合」では「罪と許し」を、純粋な心の持ち主ゆえいかなる体制にも収まりきれない「大津の場合」では「無償の愛」を説いているが、決して説教くさくなく、それぞれの人生や気持ちが魅力的に描かれている。私は若い頃は氏の「沈黙」が好きだったが、今は「深い河」の混沌というか歯切れの悪さのほうが性に合う。「人間のやる所業には絶対に正しいと言えることはない。逆にどんな悪行にも救いの種がひそんでいる。(仏教のことばでは善悪不二というそうである。)」という木口の言葉が含む自己に対する謙虚さと他に対する受容が胸に響く。生き方を法律や(宗教の)戒律で厳格に縛りつけることは決して、世の平和、心の平安にはつながらないと思う。 この小説では映画化されているが、小説と映画では大津の死ぬ理由も、何に満足して死んでいったかも異なる。私は小説のほうに軍配を上げたいが、少々、ストイックさを求めすぎるかな。
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