冒頭「追われる女」は力の抜けるような駄作。アスキスの名前は他のアンソロジーでよく見かけただけに残念。編むだけにして、自分では書かない方が良いのでは?
ここでの拾い物は、前評判通り、ギルマンの「黄色い壁紙」に尽きる。
大体において、一人称のミステリアスな短編というのは、主人公の狂気がだんだんと判明してくるという文法がほとんどで、これも手法的にはそのパターンなんだけれど、その女主人公の様態が、○子というか・・・リー○ンというか。
あまりにも有名な和製ホラーのイコン、あるいは同じくハリウッドの悪魔憑き映画のヒロインを彷彿とさせる。(長髪、正気を失ってあり得ない姿勢で・・・と言えば。連鎖的に、例のスパイダーウォークを想い出しました)
今なら小池真理子とか、いくらでも書ける人はいるんだろうけど、この作品が大昔に書かれたというのがやっぱりすごい。ごく普通の、どこにでもいるような主婦が、ただ「気が触れる」だけで世にも恐ろしい怪物になり得るという可能性を見事に突きつけてくれたわけである。シャーリー・ジャクスンの「くじ」もそうだけど、不条理オチそのものに馴染みが薄い当時の人々にはそりゃインパクト大だろう。
蛇足ですがこの作品、現代では専ら歴史的なフェミニズム論のテキストとして使われるらしい。ホラーファン的には実にもったいない使い方だと言いたいが。
他の作品は正直読むのがたるかった。幽霊屋敷騒動を描いた「空地」は、ブラックユーモアが効いていてそこそこ読めたけれど、お金を出して買うほどの価値はないなーというのが総論。