「泣ける」を売りにする小説や映画がやたら目に付く昨今。いわゆる「泣ける」作家の代表・重松清と、売れっ子脳科学者である茂木健一郎を、「涙の理由」というテーマで対談させるという着想が絶妙だ。そして丸二年以上にわたる数回の対談を経て、両者は最終章で「自分だけの涙の理由」という命題にたどり着くが、この結論にもかなり納得できた。
涙は本来的にその多くが個人の文脈の中でこみ上げるものであり、予定調和的に期待される様なものではない。でも近頃は最大公約数的に「泣ける」作品が幅を利かせ、皆が競って「泣いちゃいました」と言いたがる。何とも気持ちの悪い風潮だなあと常々感じていたが、その「気持ち悪さの理由」が本書で確認できた気がする。