今回のヒーローは、『凍てついたハート』で無愛想でおっかない獣医として登場した、ベントリー・リデル。
悪名高い女嫌いで癇癪持ち、(牧場主でも大富豪でもないけれど)動物病院のオーナーで、それなりにお金持ちの32歳。
ヒロインは、最近引っ越してきてベントリーの動物病院で働き始めたばかりの獣医助手、キャピー。
銃弾の傷がもとで下半身不随となった兄のケルと、つつましく暮らす23歳。
キャピーはベントリーに怯えながらも、徐々に彼の人となりを知り、心を通わせていきますが、
ようやく気持ちが通じ合ったと感じたもつかの間、ベントリーに誤解され、冷たくつき放されてしまいます。
その直後、彼女は暴行事件に巻き込まれてしまい…。
物語設定も展開も、いかにもダイアナ・パーマーらしい作品。
でも、ベントリーは鬼畜キャラではありません。過去にいろいろあったせいで、重度の女性不信なだけ。
その深刻な女性不信のせいで、彼がキャピーを簡単に誤解する場面では、わたしも読んでいてむかっとしましたが、
実のところ彼は根が単純ないいやつで、自分の過ちに気づいたら、それを即座に正す潔さももっています。
キャピーは恋愛には不慣れで、恋する相手に対しては臆病な面もありますが、芯は強くたくましさを持った女性です。
ベントリーの誤解に傷ついた彼女は、簡単には彼の仕打ちを許しません。
このキャピーの怒りをどうやってときほぐし、自分の本当の気持ちを彼女に伝えるのか、ベントリーの求愛がこの後半の読みどころです。
わたしは、この後半の展開が大好き。
キャピーと同様に、「ベントリーの仕打ちを絶対に許すもんか」とかたくなに思っていても、
開き直ってリラックスしたベントリーは、物語前半の癇癪持ちとはまるで別人のようで、くやしいけど魅力的。
ベントリーとキャピー、ベントリーとロークといった、登場人物たちのユーモア溢れるやりとりもとても楽しくて、
気がついたら肩の力が抜けていて、ベントリーのことを許して、彼の愛を信じてしまっている…。
深刻な事件絡みのストーリーにもかかわらず、個性的な脇役たちの活躍もあり、ユーモアがあってどこかほのぼのとした作品。
時期としては『凍てついたハート』の直後、『危険な恋の行方』の前、『恋するアリス』とほぼ同時期といったところ。
ちなみに、キルレイブン(『危険な恋の行方』のヒーロー)は今回も活躍しています。
この作品には、エブ・スコット、サイ・パークス、ハーリー・ファウラー、キルレイブンといった、過去の作品のヒーローたちの他に
キャピーの兄で、キルレイブンと深い親交があるらしい、ケル・ドレイク、
『危険な恋の行方』にも登場していた、アイパッチをした“射撃の名手(デッドアイ)”ロークなど、
いずれダイアナ作品のヒーローとなるであろうと思われる、魅力的なキャラクターが複数登場しているので、
ダイアナ作品のファンの方は軽くチェックも入れておくといいかもしれません。