そもそも資本主義は、一つの考え方として需要・消費と供給・生産が市場によって自動的に均衡する、ということが言われてきた。しかし、ケインズなどが指摘しているように、これら両者の間には乖離が生じる。それは特に過剰生産問題として登場する。これは、マーケティングにおいては生産・消費の乖離問題として扱われるが、本書は、これをより経済学的な立場に寄りながら、消費の視点からこれを解決する糸口を見つけようとするものであり、その結果、消費分析の必要性が主張される書と捉えられる。その意味で、本書はマーケティングにも示唆を与えるものであり、これを著者は『消費資本主義』として提示する。
その大まかな内容は、消費資本主義は、生産における技術革新と消費における欲望の拡大を両輪として資本を蓄積するものであり、しかも好不況の波や将来における所得も考慮する消費によって主に決定される、というものだ。具体的には、1.貨幣経済においては将来の不確実性が高まると需給に乖離が生じる可能性も高まり、なかでも個人消費の不足が不況の原因になるという消費不況説、2.消費は社会の中で消費者が自らを定位したり、商品の意味を解釈する行為であり、また習慣や他人の判断とのかかわりにおいて行われるとみなす広義の消費社会論、この2点を兼ね備えているが故に、消費を分析することの重要性が主張される。詳細は本書を参照されたい。
ここで、本書に対するコメントを1つ提示しておこう。
コメント1、本書の意義についての自分の解釈。
そもそも、経済学においては消費を分析する視点が弱い。経済学において、消費は効用を最大化するという選択問題とみなされ、生産とともに数学的な最適化分析の一応用分野として定式化されている。具体的には、セーの法則や消費者の合理性仮定の問題があり、消費を分析する視点が弱いことが指摘される。しかし、消費は選択的側面だけではなく、創造的側面(商品の消費においてどのような意味が社会的価値もしくは個人的欲望に託されているのか、その意味はどのような空間において形成・伝達されるのか、消費支出はどれほど貯蓄を抑えて景気に影響するのかなど、消費に関する実質的な議論)も持つ。消費が重視される今日、この部分にこそ、資本主義にかわる新たな概念、消費資本主義が必要である根拠がある。