欧州付加価値税を研究する者として、日本の消費税の簡易課税制度の存在意義、1,000万円という免税点の高さ及び対象事業者の広さには疑問を持っており、また日本におけるインボイス制度の導入の可否については自分なりに考えをめぐらせてきました。
本書を読んで、日本の政治環境において消費税が現状に到達することがいかに困難であったかが大変よくわかりました。ひとえに、政治三流と揶揄される日本の象徴的事象であると思います。学者としての研究にとどまらず、長年、公正な消費税制度の導入に尽力をされた著者に、改めて敬意を表したいと思いました。
インボイスが発行できないため免税事業者が取引から排除される、というコメントを本書だけではなくよく耳にしますが、インボイス制度に内在する問題ではなく、納税しない消費税は徴収できないという制度を徹底すれば、このような問題点はなくなると思います。免税点の引き下げが予想外に零細事業者の間での課税の透明性に貢献したとの記述がありますが、税制は課税の公平性が保たれているという点について国民の信頼を得ることが重要であると考えますので、これに資する義務についてはその遵守を求める一方で、行政・立法のいずれもが申告納税管理コストを理解した上で制度設計を行う合理性が望まれると思います。