本書は、しばしば「消費社会」と呼ばれる現代社会における消費という行為の持つ様々な意味を社会学的に追求し、消費者はモノをその使用価値や交換価値だけで消費しているのではないと結論付ける。著者が重視する「記号としての消費」とは、すなわち消費社会における個人は、民族性やナショナリズムではなく、多種多様な商品の中から任意の商品を選択することを通してアイデンティティーを確立していくということ。つまり商品を選択的に消費することによって、社会の中で自己が所属する、あるいは所属すべき階層・集団を確認し、そうすることによって自分を他者と区別し、自己の優越性・経済力・所属する・すべき階層等を暗黙のうちにアピールするということだ。そして社会の成員がこのように、集団的・制度的に行なう消費を通して結び付いているように見えることを指して消費社会と呼ぶのだ。
消費社会論の旗手として有名な著者の名前は学生時代から知っていた。今回実際に読んでみて、フランス人らしいシニカルな文体に多少読みづらさを感じたが、消費という行為が担っている通常とは別の意味について深く考察されている点はさすがだと思った。またよく言われる、一般消費者はマスメディアに踊らされているに過ぎないという言葉について考える契機にもなった。著者も述べているように、個々の消費者が消費という行為の社会的意味に無自覚でいる限り「お客様は神様です」というキャッチフレーズに象徴される、欺瞞的な世論によってほめたたえられ、名目だけの主権者に祭り上げられてしまうばかりだ。今後も消費社会に関する文献を読んでいきたい。