ずっと昔に読もうと思ったのだが、ハヤカワ文庫から姿を消して以来すっかり忘れていた小説が創元SF文庫に復活した。
「消滅の光輪」というのは恒星の新星化によって惑星ラクザーンが滅亡することを暗示したタイトルだと思っていた。そういう意味もあるかもしれないが、主人公マセ司政官とトド巡察官との会話によれば「司政官の光輪が現代では消えかけている」という意味であるようだ。
連邦経営機構による銀河系各惑星への植民政策が黄昏を迎えつつあるとき、新人司政官マセは司政官制度の権威を一身に背負って惑星ラクザーンに着任する。ラクザーンの太陽が新星化する前に居住者全員を別の惑星に移住させることが最大の使命だった。
しかし、ラクザーンには司政官制度などものともしない連邦直轄あるいは現地の事業体、まったく別の指揮系統で動く連邦軍、人類と共存しつつも同化を拒む現地先住民たち、マセに真意を告げることなく活動を続ける巡察官トドなど様々な障害が存在していた。こうした多数のステークホルダーの思惑が交錯する中で司政官制度の権威の失墜を防ぎつつ、退避計画を完遂するためにはどのような手を打つべきか?というゲームとしての面白さがこの小説にはある。
ゲームとしての面白さに加えて、この小説にはビルドゥングスロマンとしての面白さがある。上巻では気負いすぎの感があるマセが、下巻では苦境を経て厚みを持った人間に変化していく過程が描かれている。こうした変化を無理なく描くためには上下巻で1000ページ近いボリュームが必要だったのだろうと思う。ゲームとビルドゥングスロマンという二つの性質が相俟って、この小説は傑作となった。