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さて、訳者はあとがきの中で、著者の論調に対して次のような感想をもらしています。
「たとえ共同体が救済を拒んだとしても、たとえ言語危機の原因が英語の世界的展開であったとしても、自分たちはそこに入り込んで共同体を説得し、そして言語救済を試みるべきだという、帝国主義的ともいえる自信に満ちあふれている。ここに、キリスト教の布教を絶対的な善と信じ、「野蛮人」たちを次々と改宗していった昔の宣教師と同じ態度を見る」(231頁)
読了後の私の考えでは、訳者の見解は曲解です。
訳者にそう感じさせる記述が本書にあるならば、その箇所を引用符にくくり、掲載頁を明記した上で指摘するべきです。その作業をしていないこのあとがきは、公正さを欠いています。
著者はむしろ消滅の危機にある言語の調査に入る際には「複雑な社会状況に足を踏み入れることに伴う危険性を正しく認識する必要がある」(202頁)と指摘するなど、消滅しつつある言語の社会に対して言語学者が謙虚に接する必要性を呼びかけています。
訳者は著者の立場を植民地時代の宣教師になぞらえますが、強大な軍事力を背景にして自分たちの文化を唯一絶対として押しつけた宣教師たちと、限られた研究予算に苦慮しながらも文化の多様性を確保するために相手の文化をなんとか危機から救おうと奔走する言語学者たちとを同列に扱う比喩は不当です。
翻訳者が本書を真に理解していないという不幸な出会いがここには見られます。
なお言語の消滅に関心をもつ読者には、以下の二つの良書をご紹介しておきます。
田中克彦著「ことばと国家」(岩波新書 黄版 175)
青木晴夫著「滅びゆくことばを追って―インディアン文化への挽歌」(岩波書店)
しかし訳者の斉藤氏いわくこの本は「少しばかり毒を含んでいる」とか。「帝国主義的」なところがあるらしい。それで翻訳の際に「毒抜き」するよう努めたらしい。そのあたりのクリスタル氏と斉藤氏の主張については読者諸兄各自でよく読まれて判断されるべき。
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