開港百周年ということで、横浜がらみの企画は多々あろうが、これは異色の一冊ではないだろうか。
娼婦、特に外人相手の女たちをめぐる文化風土に目を向ける著者は、それに代表される「いかにも横浜らしい異国情緒」が次第に失われていく過程を、むやみな感傷に浸ることなく静かに追っていく。
時には著者は「横浜が外国に一番近い街といわれたのは昔のこと」、今の横浜は「ノスタルジックな残骸」であると、なかなか手厳しい指摘もする。このあたりも娼婦という題材と合わせて、レビュワーがこの本を「異色」と感じる要因の一つである。
しかしこの本は同時に、やはり百周年という横浜のお祭りにふさわしいものではあるな、とも思う。華やかに生きながら身を売る女たち、キャンプの米兵、船乗りたち、ホテル、酒場、ジャズ、といったハマの猥雑な空気を活写する著者の眼差しは、冷静で厳しくもありつつ、優しいのである。
特にそれは、老娼婦であり都市伝説にもなった「メリーさん」もすでにいなくなった現在の横浜に筆が及ぶあたりで顕著になる。警察の浄化作戦でもぬけの空になった黄金町のチョンの間街。その寂しさと、ほんの少し垣間見える未来への展望。
頭から通して読めば、舞台の裏側から横浜の百年を見た気持ちになり、読了してその未来について思いが及ぶ。様々な写真もあいまって、充実した読書時間をもたらしてくれる一冊である。