すごい本でした。内容が一言では説明できない、濃厚で幾層にも重なっている
本です。
私はクラシックホテルのエピソードや建物が大好きで、軽い
気持ちでこの本を手に取りました。
前半は「消えた宿泊名簿」とあるように、箱根富士屋ホテルのレジスターブックが
数年分意図的に消されているというところから始まる日本近代史(太平洋
戦争前後)の話です。皇族や諸外国の首相がやってくるホテルという世界だからこそ
の話はおもしろい反面、憶測もあり、ややたどたどしくも感じました。
しかし中盤からは、「政治史」「エピソード」「歴史」「建築学」などに興味の
ある人ならば わくわくするような話が目白押しです。
・様々な接収ホテルの事実
・なぜ帝国ホテルのライト館は一部保存なのか
・香港のペニンシュラホテルが実は日本の経営だった
・富士屋ホテルのっとりの真実 などなど
著者が富士屋ホテル創業者の子孫ということもあるため、「やや富士屋ホテルの
エピソードにはひいき目がある」なんて思いながら読んでいたのですが、途中から
こうした大きなホテルだからこその親族同士の生生しい争いなども出てきて
今度は経営・ヒューマンドラマとしても手に汗握りました。
そして最終章。打って変わった「著者と実母との関係」のストーリー。
今まで書かれていなかったカミングアウトでした。母娘の関係に悩んでいる人にも
何か参考になるのではないかと思われます。