スピーゲルマンが、父親の強制収容所体験記「マウス」以後に、初めて執筆するマンガで、「9.11」のショックから描かれたモノ。
あのタワーたちのすぐ側に住んでいたスピーゲルマンは、父親が言っていた、「強制収容所体験は、言葉で説明できるものじゃないんだ」という言葉を始めて理解するほどのショックを受ける。そしてブッシュが、それを口実に無意味なイラク戦争を仕掛けたことに、苛立ちを隠せない。
そして、ドイツの新聞社から2002年に「超大判のマンガ」の執筆を依頼され、この本にまとめられるマンガを描きはじめる。その際のサイズはわからないが、刊行されたこの本は、A3版でその「見開き2ページ」をまるまる使って「A2サイズ」のマンガになっている。実際は、新聞の1面を丸々と、使ったのだろう。
スピーゲルマンが描いたマンガは、「9・11」の体験と、その後のブッシュ政権の間違いからくる悪夢を、様々な絵柄で描いている。
「マウス」のネズミの絵柄や、彼が愛する、20世紀初頭の様々な、新聞マンガ(日曜新聞のコミックス付録)たちの形式を借りて、大きなページをさまざま多彩な絵柄で自在に描き分けて、われわれを幻惑させ、そして我々が、複雑な悪夢的世界にいることを感じさせる。
そして、どの頁にも常に、左上にはぼんやりと、崩壊するタワーが描かれている。
この本の後半は、スピーゲルマンが元ネタにした新聞マンガたちの復刻で、その「ピクチャレスク」なマンガたちは、どれも素晴らしい。
ここにそれをあげると。
・ライオネル・ファイニンガー「キンダー・キッズ」
・グスターヴ・ヴァーベック「リトル・レイディ・ラプキンスとマファルー老人のさかさま物語」 →一度読んで、上下ひっくり返して読むとまた話が続いているというものがだ、以前、私が目にしていたモノと少し違う。そして、こちらのほうが素晴らしい。
・ウィンザー・マッケイ「まどろみの国のリトル・ニモ」→ニモとジャングル少年、そしてフリッツがニューヨークのビル街で巨大化して歩きまわり、フリッツはゴジラのようにビルを壊して歩く。
・ジョージ・マクマナス「おやじ教育」
・ジョージ・ヘリマン「クレイジー・キャット」